IT業界の多重下請け構造が発生してしまう一つの見解
やあやあ。
このネタは、paizaさんの所の「IT業界の『多重下請け構造』は社会悪になりつつある」とい記事を読んだ後、ぼーっと思いを巡らせて、その時自分の中で思いついた事をあくまで私の個人的な見解と偏見で書き殴っただけのお話です。
IT業界の『多重下請け構造』は社会悪になりつつある - paiza開発日誌
尚、この記事に対する見解ではないので悪しからず。
多重下請け構造の定義については既に分かっているものとして話を続けます。
これがなぜ起きるのか、ですが、それは儲けて食っていくる為であると考えます。
儲ける為の多重下請け構造
仮に、4人で取りかかる程度の案件が存在すると仮定しましょう。
発注先から1次受けの企業へ、一人頭月に100万円払う事になった場合、4人働かせれば400万円を月に受け取ることになります。
IT業界ではこの考え方を「人月」と表現し、発注元へ「うちでは月当たり一人頭おいくら必要ですので、何卒お納めください」という説明や、社内での売り上げ予測に使用することになります。
さて、この100万円の内、粗利を30%生み出そうと考えると、人件費は月に一人頭70万円程度で抑える必要が出てきます。
人を一人雇うと、会社は色々な経費を払う必要が出てきます。
先ずは給与。残業もするだろうと仮定し、月換算で40万円程貰っているものとします。これで残りは30万円。
健康保険、厚生年金、社会保険、通勤費、その他福利厚生費用を諸々含めると、まあ給与の4割程度でしょうか。分かりやすく15万としておきましょう。残りは15万。
一見、「この15万丸儲けでは?」と考えられますが、実際には会社の運営費や耐久消費財への投資、もっと給料を貰っている層への補填、上場企業であれば配当も発生しますね。何だかんだで使われて、そこまで残らないんじゃないですかね。
当然、デスマーチになれば残業代が跳ね上がるので、粗利から出していく事になるでしょう。
これを、4人中3人を月に80万円で賄える会社の人に置き換えるとどうでしょうか。
月単位の粗利(30万円×3名)から、利ザヤ(20万×3万)に置き換わるので一見、月辺り一人頭10万の損のように見えます。
ここで残業が増えた時のことを考えましょう。
月に100万円の人が残業をすると、一時間当たり2500円払う事になっていると仮定。また、この残業代にも会社は別途経費をpayすることになるので、2割増で払う事になるとしましょう。深夜残業による割増し計算も必要ですが、いったんここではざっくり計算なので目をつむります。
すると、3000円(= 2500円×1.2倍 )で、33時間以上残業すればそのマイナス分を上回ることが分かります。毎日1.5~2時間程度多く残業するか、4~5日休日出勤されるとポーンと飛んでしまします。
これを利ザヤで稼ぐようにすれば、60万は常に手堅く手元に残ることになります。
え、残業や休出が多い? これがですね、IT業界ではよくある事なんですよ……
という業界構造になっている為、ポンポンと安い所に多重下請けをする程、手堅く利益が確保出来てしまうんですね。うーん、まさに利ザヤの毒に汚染された構造ですな。
発注元を食わせる為の多重構造
儲ける以外にも多重構造を使用する場合があります。
前述の様に、 4人で取りかかる程度の案件が存在すると仮定しましょう。
この4人は月に100万円必要です。しかし、お客様はそんなにお金を払いたくないので、「月当たり、90万円にしてくれんかね?」と言ってきたとします。嫌なら受けなければいいのですが、このご時世文句が言えない場合もあり、仕方なく90万円で受けざるを得ない場合もあります。
さて、90万円×4人で360万円となりますが、これでは100万円の人を4人食わせる事ができません。この場合、 4人中3人を月に80万円で賄える会社の人に置き換えるとどうでしょうか。
360万から100万の人1人分を確保すると残りは260万円。これを80万円の人3人で山分けすると、以下のようになります。
260万円ー80万円×3人=20万円
これで、100万円の人を1人食わせ、尚且つ20万のプール金が生まれました。利ザヤで儲けた時と比べると大幅に目減りしていますが、それでもマイナスにはなっていないのでこの業界では取り敢えずよしとする場合が多いです。
ピンハネで元受社員を食わせるという構造ですね。
ITに対する投資は、物理的な投資ではない為軽視される傾向があり、各企業から中々お金が出てきません。既に大きなパイは配り終えています。後は、こういう小さなパイを食い合うことになります。
また、クラウド化やミドルソフトウェアの高度化、内製化の推進により、SIerが食べるパイは一時的に減少していくでしょう。
(誰かが何かを作っている事は間違いないないので、IT業界としてのパイは存在形態が変わっただけでまだまだ大きいものです)
また、ピンハネされる社員は仕事量に見合った賃金を受け取れているのかは怪しい所です。今回の例では100万円が90万円という仮定でしたが、この下げ幅が大きくなり、それでもその仕事を取らねばならないジリ貧ゲームを強いられることになれば尚の事でしょう。
これが、SIerの将来が暗いといわれる原因の一つではないでしょうか。
なんかいい方法はないのか
銀の弾丸はありません。
強いて言えば、「理解あるお客様による適切な金額の投資」と「平均的なエンジニアとして生きれば何処の会社でもウエルカム」な風土がこの国に根付くこと位ですかね。
ITは企業運営上必要な投資と理解してちゃんとお金を出し、エンジニアも嫌ならサクッと辞めて新しい職場で再スタートが出来るようになれば、あんな負の連鎖は成立しなくなるはずです。
後は、「受けのIT業態」をみんなで止めることですかね。
情報技術なのに、コピペワーキングと管理の為の管理で悪戯にリソースを食いつぶすのはもう止めにしないか?
もっと、なんか、ワクワクする新しいことを生み出していこうぜ?
他にも方法はあるのでしょうが、私にはこの瞬間はこのくらいしか思いつかなかったです。厳しいですねえ。
ではでは。