救急車で運ばれた話
やあやあ。お元気ですか?
実は私、お恥ずかしながら先日救急車で運ばれました。
分かりやすく言うと、右膝が脱臼してしまった為です。
気合で動こうにも、痛みでどうにも動けず、自分でどうにもできずで、命の危機でもないのに申し訳ないと思いつつ119番をしました。
搬送措置
私は2階で脱臼してしまった為、1階へ降りる必要がありました。通常、階段であってもストレッチャー等を利用して運んでもらえるのですが、階段が狭くて急勾配、挙句に曲がり角があった為にストレッチャーを使用することが出来ませんでした。
その為、人力で這ってでも1階へ降りる必要に迫られました。
また、2階で脱臼してしまった旨を伝えた為、119番の電話の先で気を利かされて、消防車(レスキュー隊)まで来られていました。 救急車を呼んだのは私なのですが、消防車、しかもレスキュー隊まで来ていたとは思いもよらずで、「これはえらい事になってしまったぞ……」と冷や汗をかくなど。
レスキュー隊の方の一人が、「僕ががんばって背負ってみましょうか?」と言い出して下さったのですが、どう考えても危険だと言う事でその案は避けて頂きました。
また、はしご車もあるし思い切って窓から出してみるかという案も出かけたのですが、窓から人を出せるほど私の部屋が綺麗ではなかった為、こちらもひっこめて頂きました。
膝は30°~45°以上開くと痛くて震え、その角度を維持しようとしても膝に力が入らず重力で引っ張られて涙目に。
結論としては、自在に形を変形できるシーネで膝の角度を維持して三点固定して貰い、階段は複数人に支え・吊られた状態で尻で這って降りました。
足を固定して貰いながら何とか外まで出る事が出来たのち、 ストレッチャーに固定されて救急車まで運ばれました。
ガラガラと道を運ばれ救急車に積まれるまでの間に消防車が2台も見え、更に冷や汗が出るのありました。
ここまでで40分程度。
救急車に来てもらうコスト
日本では、救急車は無料で来ていただけます。その料金は、皆さんの税金で賄われています。個々人にその利用料が請求されることはありませんが、実際にはその1通報で結構な金額が動いています。
この通報時の本当のコストは、その地域地域の人口や財政状況、通報頻度や時間帯によって左右される所がありますが、東京ですと5万強程度、地方ですと7万強から10万強程度だと聞いたことがあります。
個人で払える額か否かと考えた時、払える額ではあるのでしょうが、決して安い金額ではありません。
また、私の場合は窓からの搬出までを考慮された結果、消防車(レスキュー隊)まで来て頂きましたので、実際の費用はもっともっと掛かっていると思います。生死を彷徨っているわけではないのにこんなに全力で助けて貰い、何と申し上げればよいやら。
救急車や消防車は台数が限られた各地域の財産であるとも考えられます。
皆のものであれば、独り占めしていいものではありません。
無料でこの行政サービスを受けられる為、我々はこのような意識が薄れていたりします。当然、私もこの身をもって搬送されてみて、何と大変なもんなんだと実感するようになりました。
救急車の車内
こういうことを言うと石か鉞が飛んでくるかも知れませんが、 ストレッチャーに固定されていた私は、非常に乗り心地が良く感じました。振動も少なく、社内は全ての器具が磨き上げられており、とても清潔でした。
過去に人が倒れたり事故に遭っているのを見て救急車を呼んだ事は何度かありましたが、実際に搬送されたのはこれが初めてでした。
車内の装置類は原則壁に固定されており、必要なものをそこから引き出して利用するというインターフェースになっていました。
夜間救急の実態と措置
救急車で運ばれた後、私は救急の出入口より病院内へ搬送されました。
私が脱臼をしたのは夜中だった為、夜間救急に運び込まれました。
処置室に運ばれ、病院のストレッチャーへ移動。こちらのストレッチャーは寝心地が悪く、かなり固い素材で出来ていました。途中、足よりもお尻の方が痛くなってきたのですが、わがままは言えません。
救急隊のおにいさんに、「後はちゃんと治療を受けて、ちゃんと静養するんやで。お大事に」とポンポンとして貰い、そこでバトンタッチ。
その日の夜間救急は、非常に静かでした。救急と言えば人がいるのかと思いきや、熟練ナースが1人、医者が2人。
医療現場は、救急でも本当に人が少ないんだなと感じました。
過去に夜間に病棟で付き添いをしたことがあったのですが、1つのフロアにナースが2人しかおらず、その2人も常に走り続け、静かなフロアに鳴り止まないナースコールとバイタルの緊急アラームが鳴り続けていました。
ナースは天使みたいなことを言う人がたまにいますが、私には戦地を駆け巡る歴戦の兵士のようにも見えました。
さて、話は戻って私の措置の話。
硬いストレッチャーでしばらく待っていると、お医者さんが2人やってきました。2人して足をモミモミ。関節の形が云々と言いながら何処がどう痛むのかと聞くと、2人とも何処かへ。
その後、ナースが現れてレントゲン室に運ばれました。
病院内の移動は、そのナース1人で「うんしょうんしょ」と運んで貰いました。いやはや、申し訳ない。
レントゲン室では、膝関節を色々な方向から撮影して貰いました。
通常、レントゲンは不要な被曝を避ける為に放射線技師は退避して撮影を行う必要があるのですが、私の場合は膝を動かすことが出来ない為、意を決した放射線技師さんが空中撮影を決行し、手作業で撮影を行って下さいました。本当に申し訳ない。
この撮影時に技師さんは画像も確認せずに、「半月板じゃねえかなあ」と呟いていました。
その後、撮影の結果をお医者さん2人が見ていたのですが、どうも撮影結果で判断が出来なかったらしく、整形外科の専門医に夜中に電話し、相談をされているのが聞こえてきました。その電話の向こうでは、「半月板じゃねえの?」と、画像も患者も見ずに判断を下す専門医。
どうやら、この病院にはエスパーが沢山働いているらしい。
診察結果と治療方針が決まるまでボーっと待っていると、ガタイの良いおっさんがどかどかと措置室に入ってきた。そのまま奥の方に消えていく姿を見ていたのですが、その腕には黒い腕章が付いていました。
喪章である。なるほど。運ばれたけど亡くなった人がいたのだな。救急だもの、当然である。
半月板の位置がおかしいと言うサジェストを受け、治療方針が決定。お医者さんに半月板の位置を戻しながら膝関節を伸ばしてはめ直す措置をして貰いました。結構な荒業。
痛みに耐えつつ関節を伸ばされていくと、どこか途中で「カポッ」と嵌った感覚がありました。お医者さん2人もその途端ニヤリと笑い、「嵌った気がしますが、どうですか?」と。私もニヤリと笑いながら、「ええ、そんな気がします」と返した。
実際、この瞬間から痛みと関節内の熱さが引き、曲げ伸ばしが可能に。
その後お医者さん2人の話を聞くと、「恐らく半月板を固定している腱の片方が緩んでおり、そのせいで位置がずれてしまって戻らなくなってしまったのが原因ではないかと思います。ですので、近いうちに整形外科にかかって腱を縮めるオペを受けて貰った方が良いと思います」と。
それに合わせて、「ただ、正直僕らはこういうの全然分かんないんで、今の説明通りかは分かんないんですけどね」と。
なるほどである。お医者さん2人は私よりも遥かに若く、白衣も余り馴染んでなかった事実と合わせると、恐らく研修医だったのだろう。じっくりと顔を見ると、女性のお医者さんはメガネとファンデーションで隠しているものの、うっすらとクマが。
夜間病院は、寝れていない研修医で回っていることもあるのだと考えると、尚の事過酷な世界だとも言える。
関節の状態修復終了後、念の為に伸縮包帯でテーピング固定を行って貰い、その日の措置は終了。不思議なもので、嵌った後は自立歩行が可能に。当然と言えば当然なのだが、いやまあ、こんなにあっさりと。
治療費は夜間加算が付いていましたが、財布にある現金で払う事が出来ました。
皆さん、夜間救急ではクレジットカードは使えないので、保健証があったとしても数万は財布に入れておいた方が良いですよ。
途中、清算待ちの間におばあさんが先に清算を済まされました。付添いの雰囲気を見ると、在宅介護で何かがあって運ばれてきた雰囲気。そちらの方は数百円程度でした。これが「日本の保険の力」かと思うと、まあ賛否両論あるのでしょうが、髪の毛もぼさぼさでやつれていた家族の方を見る限りでは、そうも「否」を強くは出せない私であった。
色々あって色々と助けられた私ですが、この国の行政サービスや保険はかなり手厚いなと感じました。それと同時に、確かに高いのはある程度仕方ないのかなあと感じる点もありました。
行政サービスや医療保険は共有財産であり、利用者がモラルを持って恩恵を受けていかないと、回りまわって廃止や有料化へシフトしていく危険性も当然あると思います。
また、それらの恩恵は窮地に追い込まれて実際に受けてみないと分からない面もあると思います。
安心は無料ではない。